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男性の育児休業 みんなの実例

中間管理職だからこそ、育児休業を取る。次の世代へつなぐバトン

中間管理職だからこそ、育児休業を取る。次の世代へつなぐバトン

伊万里市の有限会社伊万里スイミングクラブ。スイミングクラブの運営からスタートし、現在はスポーツクラブや放課後児童クラブなど、地域に根ざした事業を展開しています。

2026年1月、「スポーツクラブGENEX伊万里」で施設長を務める坂本さんが、18日間の育児休業を取得しました。

施設長という立場で、どのように仕事を調整し、育児休業に入ったのでしょうか。また、男性が育児休業を取得しやすい職場づくりのために、どのような工夫をしているのでしょうか。

坂本さんと、総務の森宗さんにお話を伺いました。

【プロフィール】

坂本 拓也 さん

  • 事業所名:有限会社伊万里スイミングクラブ
  • 役職:スポーツクラブGENEX伊万里 施設長
  • 家族構成:妻、長女、次女、三女、四女、五女
  • 取得期間: 18日間

【プロフィール】

森宗 泰智 さん

  • 所属:総務課
  • 担当:総務・労務

1. 施設長の育児休業。約2ヵ月前から不在に備える

5人姉妹のお父さんである坂本さん。育児休業を取得するのは今回が3回目です。以前は数日程度でしたが、今回は初めて2週間以上の育児休業を取得しました。

普段はトレーナーとして会員への運動指導を行うほか、施設長として売上や経費の管理、施設運営などを担当しています。

GENEX伊万里は坂本さんを含め6名体制。これまでより長く職場を離れるにあたり、早い段階から準備を始めたそうです。

坂本さん

出産予定の約2ヵ月前には、育児休業を取ることをスタッフ全員に伝えていました。いつ生まれるか分からないので、翌月のシフトを組む段階から、自分がいなくても現場が回ることを前提にして、みんなでカバーできる体制をつくっていったんです。

休みに入る直前に引き継ぐのではなく、早い段階から坂本さんが不在でも業務が回る状態をつくっておく。スタッフにとっても、その働き方を事前に経験できる準備期間になりました。

坂本さん

実際に自分が休みに入る頃には、スタッフもその体制に慣れていたので、特に大きな混乱もなく、スムーズに休みに入ることができました。

2. 家事・育児に向き合って見えた、家族の日常

育児休業中は、出産後の妻にできるだけ体を休めてもらうため、坂本さんが家事を中心に担っていたそうです。

掃除や洗濯は普段からしていたものの、仕事の帰りが遅いこともあり、これまであまり経験してこなかったのが毎日の食事づくりです。

坂本さん

子どもの送り迎えをして、買い物に行ったら、もうお昼。そこから夜ご飯の準備をしていると、上の子どもたちが帰ってくる。本当に一日があっという間でした。
献立を考えるのも大変で、夕方5時から作り始めたのに、出来上がったのが8時だったこともありました(笑)。普段、妻が決まった時間にご飯を出してくれていたことのすごさを実感しましたね。今では少し料理にも慣れて、レパートリーも増えました。

慌ただしい毎日の一方で、家族と長い時間を過ごしたからこそ気づけたこともあったそうです。

坂本さん

正直、ここまでしっかり家事をやってみるまでは、子どもたちがどのくらい食べるのか、どういうものが好きなのかも、よく分かっていなかったんです。
仕事ならある程度段取りがありますけど、子ども相手だと何が起こるか分からない。「仕事をしている方が楽かもしれない」って何度も思いましたね(笑)。それくらい、家の中では次から次にやることがあるんだと、身をもって知ることができました。

家事や育児を担いながら、これまで以上に家族の日常に向き合った坂本さん。普段は見えていなかった家事・育児の大変さや、家族の毎日を知る時間になりました。

3. 育児は「手伝う」ではなく、「支え合いながら一緒にするもの」

育児休業を終えたあと、坂本さんの日常にも少しずつ変化がありました。

坂本さん

以前は妻から「夕飯、何がいい?」と聞かれても、「なんでもいいよ」って答えていたんです。でも、自分で毎日献立を考えてみて、それがどれだけ大変なことか分かりました。
育児休業中に、子どもたちが何を好きなのか、どのくらい食べるのかも分かってきたので、今は「今日はこれがいいんじゃない?」と、具体的に答えるようになりました。

家事や育児を実際に担ったことで、坂本さんは育児そのものへの向き合い方も変わったといいます。

坂本さん

父親が「育児を手伝う」「手助けする」という感覚は、違うなと思いました。お互い家族なので、支え合いながら一緒にやるもの。自分で経験してみて、本当にそう感じましたね。

その経験は、仕事にもいい影響があったといいます。

坂本さんは、トレーナーとして会員への運動指導を行うほか、健康経営アドバイザーとして企業の健康づくりにも携わっています。

坂本さん

トレーナーは人と関わる仕事なので、お客様にもそれぞれの生活や家庭の背景があるということを、以前より考えられるようになったと思いますね。育児休業を経験したことで、いろいろな立場や生活に目を向けられるようになったことは、仕事にもプラスになっています。
家族と向き合うなかで得た気づきは、家庭での関わり方だけでなく、人と向き合う仕事にも活かされています。

4. 助成金制度を活用。会社にも本人にもメリット

伊万里スイミングクラブで、男性社員が初めて育児休業を取得したのは11年前。最初に手を挙げたのが、総務や労務を担当する森宗さんでした。

自身に子どもが生まれるタイミングで、育児休業の取得を考えていた森宗さん。当時はまだ社内に前例がなかったため、会社が活用できる助成制度がないか、自ら調べたといいます。

森宗さん

ただ休むだけではなく、会社にも何かメリットがある方法はないかなと思って探しました。もともと助成金関係の実務を担当していたこともあり、国の「両立支援等助成金」があることを知って、会社に「こういう支援があるので活用してはどうか」と相談したんです。承諾を得て申請し、会社として助成を受けることができました。
今回の坂本施設長の育児休業でも、佐賀県の「SAGA PAPA育休アシスト奨励金」を活用しています。まずは自分たちの会社で使える支援制度がないか調べてみること。それも、男性の育児休業を進めるきっかけになると思いますね。

利用できる制度を上手に活用し、会社側の負担にも配慮しながら男性の育児休業取得につなげた森宗さん。制度を知り、自社に合った形を探したことが、最初の取得を実現する一歩につながっていました。

5. 今の父親世代で、男性育児休業を「あたりまえ」にしていきたい

今回、坂本さんがこれまでより長い育児休業を取得した背景には、「後輩たちのいい前例になりたい」という思いもありました。

坂本さん

自分は年齢的にも役職的にも、経営陣と若いスタッフのちょうど間くらいにいるんです。だから、自分が育児休業を取ることで、若いスタッフたちも「自分も取っていいんだ」と思ってくれたらいいなと。
自分に経験があれば、後輩から相談されたときにも実体験をもとに話せますし、会社にもつなぎやすい。そうやって、少しでも後輩たちの力になれたらと思っています。

森宗さんも、一人ひとりの経験を次の世代につなげていくことが、これからの職場づくりだけでなく、採用の面でも会社の強みになると考えています。

森宗さん

それぞれの会社で、いろいろな問題や課題はあると思います。それでも、次の世代の人たちが「男性も育児休業を取るのがあたりまえ」と思えるような環境や制度を、僕たちのような今の父親世代でつくっていけたらと思っています。
特に新卒採用などでは、男性でもしっかり育児休業を取れる会社かどうかは、若い世代が会社を選ぶうえで大切な条件になってきていると感じます。そうした環境を整えていくことは、働く人にとってだけでなく、採用の面でも、会社の魅力のひとつになると思いますね。

先に取得した人の経験が、続く後輩たちの「自分も取っていいんだ」という安心につながる。そんなバトンの受け渡しが、男性が育児のために休むことを少しずつ「あたりまえ」にしていきます。

その積み重ねは、これから働く人たちにとっての、企業の新たな魅力にもつながっていくのかもしれません。

育児休業により感じた3つのメリット

  • 早めの共有とシフト調整で、施設長の長期不在にも対応できた
  • 家族と向き合う中で得た気づきが仕事にも活かされている
  • 中間管理職の取得で、次の世代が続きやすい環境へつながった