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男性の育児休業 みんなの実例

男性の育児休業を“あたりまえ”にした、支え合いの現場

男性の育児休業を“あたりまえ”にした、支え合いの現場

佐賀県武雄市に拠点を置く大同メタル佐賀株式会社。

自動車や船舶などに使われる「すべり軸受」で世界トップシェアを誇る大同メタルグループの一員として、ものづくりの基盤となる軸受材料を製造しています。

従業員約90名のうち、およそ80名が男性。これまでに15名の男性社員が育児休業を取得しています。

育児休業を取りやすく、不在時も業務を回せる職場を、どのようにつくってきたのでしょうか。

澁谷社長、労務を担当する総務部の中島さん、取得者の阿津坂さんに、育児休業を支える仕組みと職場の変化について伺いました。

【プロフィール】

澁谷 泰 さん

  • 事業所名:大同メタル佐賀株式会社
  • 役職:代表取締役社長

【プロフィール】

中島 恵美子 さん

  • 所属:総務部
  • 担当:労務

【プロフィール】

阿津坂 陸 さん

  • 所属:製造部門
  • 家族構成:妻、長男(1歳)
  • 取得期間:約2ヶ月間

1. 15人の取得を後押しした、「まずは言ってみて」の姿勢

大同メタルグループが経営方針として掲げている「人的資本経営」。大同メタル佐賀でも、従業員を大切にすることを職場づくりの土台にしています。

男性の育児休業について本格的な働きかけを始めたのは、2022年の育児・介護休業法の改正がきっかけでした。

対象者への個別周知や意向確認に加え、班長などの管理監督者への研修も行っています。

澁谷社長

ものづくりの原点は、従業員です。採用が難しくなっていくなかで、企業が持続的に発展していくためには、まず従業員を大切にすることが欠かせません。
男性の育児休業についても、制度を周知するだけでなく、管理する立場の社員に「男性も育児休業を取得する時代なんだ」と理解してもらうことが大切だと考えてきました。
弊社では、2022年に初めて育児休業を取得した男性社員が、現場をまとめるリーダーだったことも大きかったですね。リーダーが取得したことで、後輩たちにも「自分たちも取っていいんだ」という雰囲気が生まれたと思います。
取得する時期についても、基本的には「自分の都合を最優先にして、まずは言ってみて」と伝えています。育児は待ったなしですし、ご家族の状況もあります。多少の調整が必要になることはありますが、できる限り本人の希望に沿えるようにしたいと考えています。

2. 育児をして見えた、妻の負担。1ヶ月の予定を2ヶ月へ

阿津坂さんが育児休業を取得したのは、2025年5月初旬から。当初は1ヶ月で職場へ復帰する予定でした。

阿津坂さん

育児休業中は、朝・昼・夜のご飯をつくって、洗濯、買い物、お風呂、ミルク、おむつ替えなど、できることは何でもやりました。
ミルクを飲ませて、上手にげっぷをしてくれたときは、子どもに関わっている実感があって幸せでしたね。

一方で、夜泣きが続き、妻がほとんど眠れない状態に。育児の大変さも、身をもって感じたといいます。

阿津坂さん

育児は本当に24時間休みがありません。このまま自分だけ仕事に戻って大丈夫だろうかと不安を感じるようになりました。
そこで、復帰する1週間ほど前に会社へ電話して、「できれば、もう1ヶ月延長したい」と相談したんです。急な話だったので難しいかもしれないと思っていたんですが、すぐ検討してもらって、了承をいただきました。驚きつつも、ありがたいなと思って、もう1ヶ月休ませてもらいました。

現在は夫婦ともに仕事へ復帰し、勤務時間に合わせて保育園の送迎を分担しているそうです。

3. 特別な引き継ぎはなし。日頃の「多能工化」が不在を支える

急きょ約2ヶ月間となった阿津坂さんの育児休業。それでも、大きな体制変更や特別な引き継ぎをすることなく、現場の仕事を回すことができたといいます。その土台にあるのが、一人ひとりが複数の工程を担えるようにする「多能工化」です。

澁谷社長

当社は比較的規模の大きくない会社だからこそ、一人がいろいろな仕事をできるよう、守備範囲を広げてきました。
育児休業だから特別に対応したというより、もともと誰かが不在になったときにも、お互いにカバーできるようにしてきたんです。
日々の仕事も、班長がその日のメンバーを見ながら割り振っています。急な休みが出ても、できる人がカバーする。そういう働き方を積み重ねてきたことが、育児休業にも活きていると思います。

大同メタル佐賀では毎年3〜4名の社員を、愛知県にある大同メタルグループ内の教育機関「大同メタルカレッジ」へ派遣しています。研修期間は1〜2ヶ月。その間は通常の現場業務から離れるため、以前から「誰かが長期間不在でも仕事を回す」経験を重ねてきました。

こうした仕組みに加え、阿津坂さんが所属する約13名の班では、メンバー同士の支え合いもあったそうです。

阿津坂さん

品質改善に取り組む「QCサークル活動」についても、育児が大変なうちは参加しなくていいように、メンバーが調整してくれました。
「活動は自分たちでカバーするから、安心してゆっくり休んで」と言ってもらえて、とてもありがたかったですね。

4. 「取れる?」から「いつ取るか」へ。労務担当が感じる変化

現場の体制とともに、男性社員の育児休業を支えているのが総務部です。

労務を担当する中島さんは、妊娠・出産の情報を聞いた段階で対象となる社員と面談し、制度や手続きについて説明しています。

中島さん

相談を受けたときに、まず大切にしているのは、「おめでとう」という気持ちをしっかり伝えることです。
育児休業を取れる機会は、人生のなかで何度もあるものではありません。「お子さんの成長を間近で見られる大切な機会だから、ぜひ取得してね」と伝えるようにしています。
社員の出産予定について情報が入ったら、こちらから本人に声をかけて面談の場を設けています。そこで、取得したい時期や期間、上司への相談状況などを確認しています。

こうした働きかけと、先輩たちの取得実績が積み重なるなかで、社員から寄せられる相談にも変化が生まれています。

中島さん

以前は、「本当に育児休業って取れますか?」というところから相談が始まっていましたが、今では、「この時期に取りたい」「こういう取り方をしたい」という相談がほとんどです。育児休業が社内にかなり浸透してきたと感じています。
本人が計画を立てて、班長も「いいよ」と受け止めてくれるので、労務としてもスムーズに対応できるようになっています。

5. 育児休業の経験が、将来のリーダーを育てる

育児休業から復帰した阿津坂さん。職場のメンバーに子どもが生まれると聞いたときには、自身の経験から育児休業の取得を勧めているそうです。

阿津坂さん

自分も周りに支えてもらったので、今度は育児休業を取る人を応援したいという気持ちが強くなりました。
会社には急な延長もすぐに認めてもらって、本当に感謝しています。その分、復帰してからは、しっかり仕事で会社に貢献したいという気持ちが以前より強くなりました。

入社時から阿津坂さんを見てきた中島さんも、育児休業を経た変化を感じています。

中島さん

お父さんになり、家事や育児に向き合う姿を見て、とても頼もしく感じています。
復帰後に「会社に恩返ししたい」と話してくれたことも、労務担当としてうれしかったですね。

澁谷社長は、育児休業を経験することは、本人や家族だけでなく、これからの職場づくりにも生きてくると考えています。

澁谷社長

「企業は人なり」です。従業員の幸せは、企業の持続的な発展につながると考えています。
一人が長く現場を離れることを、最初は厳しいと感じる会社もあると思います。でも、会社が前向きに支えて送り出せば、本人の責任感や感謝、仕事への意欲という形で職場に返ってくる。阿津坂くんも、復帰後はより一層頑張ってくれています。
若いうちに育児休業を経験しておくことは、将来リーダーになったときにも活きると思います。部下から相談されたとき、自分自身の経験をもとに「取っていいよ」と言える。その経験が、また次の人につながっていくのではないでしょうか。

誰かが休んでも仕事を回せるよう、日頃から備える。会社や管理職が「休んでいい」と伝え、取得した人が次の人を支える。

大同メタル佐賀では、育児休業の経験が一人ひとりに受け継がれながら、男性の育児休業が職場の「あたりまえ」へと変わっています。

育児休業により感じた3つのメリット

  • リーダーの取得実績が、後輩社員の安心感につながった
  • 多能工化により、社員の長期不在にも柔軟に対応できた
  • 長期研修で培った経験が、育児休業時の業務体制にも活かされた